上昇と下降

NEWSファンによる日記兼メモ兼文章練習

ジャニヲタから見た地下アイドルヲタの世界

地下アイドル、それは、アイドル戦国時代とも呼ばれるこの時代のアイドル界を賑わす存在である。

 

まず、地下アイドルとはそもそも何か?

ライブアイドルとは、マスメディアへの露出よりもライブ等を中心に活動するアイドルのこと

これは、Wikipediaの「ライブアイドル(=地下アイドル)」の項による定義である。テレビや雑誌、時には映画でも活躍するジャニーズが「マスメディアへの露出」を中心に活動するアイドルだとすれば、地下アイドルはそれに相対するジャンルのアイドルであると言えるだろう。

 

私には3歳下の妹がいる。彼女は地下アイドルのファン、いわゆる地下ヲタである。そんな妹を持つジャニヲタの私は、日々ジャニーズの世界に浸りながらも、地下ヲタの世界を横から眺めながら過ごす毎日を送っている。

 

妹は、もともとは私と同じでジャニーズのアイドルをを応援していた。山Pと横尾さんと小山さんを掛け持ちする、そこそこ重度のジャニヲタで、「山Pはマジで人類の奇跡!」、「私、横尾さんと結婚するんだ~」、「小山の腕まくりヤバい!」といったセリフを繰り返して生きていた。私としては、彼女は飽きっぽい性格なので、いつ何がきっかけで誰に降りるか分からないなあ、と思っていたが、妹が去年の夏に突然降りた先はまさかの地下アイドル、未知の領域であった。突然地下アイドルの世界を身近に感じる状況におかれた私が受けたカルチャーショックは大きかった。同じ男性アイドルといえども、メディア露出中心のジャニーズとライブ活動中心の地下アイドルは全く違うものだ。今日は、私が受けたカルチャーショックの数々を殴り書きしておきたいと思う。

 

~ジャニヲタの視点で見る、華麗なる地下ヲタの世界~

ジャニヲタは「担当」、地下ヲタは「推し」

 基本的には、ジャニヲタの界隈では「担当」概念が浸透している。私としてはこの概念には多少の疑念もあるが、一応はシゲアキ担を名乗っているし、私の担当は加藤シゲアキだ。これに対して地下ヲタ(というかアイドルヲタ全般)は「推し」というワードを使う。地下ヲタの世界ではこれは絶対らしく、ジャニヲタから流れたヲタが「私○○担なんです~」とでも言おうものなら周囲からの総スカンをくらうそうだ。

毎週のようにイベントがある

 さすがライブ活動を中心とするだけあって、ライブをはじめとする各種イベント(トークイベントなどもよくある)がほぼ毎週末開催される。ジャニヲタが自担を肉眼で見ることができるのがコンサートと場合によっては舞台や番組協力だけで、ツアー多ステなどを除けばせいぜい年に1,2回であるのを考えると、この違いは大きい。お金を払ってイベントに行けばアイドルに会えるのが当たり前だから、ジャニーズのコンサートのように、アイドルの姿が見えた瞬間に大音量で悲鳴が上がったりはしない。なんならメンバーが公式の衣装を着て公園や街中をぶらぶら歩き、グループの宣伝チラシを持って通行人に配っている。私が最初に地下ドルのメンバーが3人でつるんでチラシ配りをして歩いているのを見たとき、私は「すごいハイクオリティのコスプレがいるんだなぁ~」と思ってしまった。だってジャニーズがチラシもって街中を歩いてるとかありえないじゃない!

 

特典会の存在

 このようにかなりの頻度でライブが行われるのだが、そのライブ終了後に毎回開催されるのが、「特典会」である。これは、一定金額分の公式グッズを買えば参加できるもので、2ショット会やサイン会が主である。グッズ購入時に特典会参加権が渡され、ライブ終了後に「2ショット券をお持ちの方はこちらにお並びください」などという案内がされる。言われた通りに並んで順番を待てば、自分の「推し」と2ショットの写真を撮ったり、サインをもらったりできるのだそうだ。その間、短い時間だがアイドルとの会話も楽しむことができるらしく、通い詰める、またはインパクトのある振る舞いをすればメンバーに顔を覚えてもらえるという(これを、「認知される」というらしい)。ジャニーズでもグループによっては握手会などがないこともないが、顔を覚えられるなんてこれまたありえない。

 

ファン同士のつながりの強さ

 イベントが多いので、それに比例してファン同士が顔を合わせる機会も格段に多い。また、ジャニーズに比べると会場に集まるファンの数が少ないので、ファンとファンの交流が盛んである。これには良い面と悪い面があり、まず良い面は、ヲタ友が増えるのでチケットの交渉やグッズの譲り渡しなどがしやすいことである。また、地下ドルは地元を拠点に活動することが多いので、そのヲタも自然に同じ地域に住んでいることが多く、ヲタ友とすぐに会って遊ぶことができて楽しいということもある。実際、妹は地下アイドルから降りようとしたこともあるが、現場でのヲタとのやり取りの楽しさを捨てられずにヲタ卒を思いとどまった。また悪い面は、つながりが強い分、目立った行動をすると周りから反感を買うことがあることだ。ある程度現場経験を積んだヲタなら当たり前のようにメンバーから「認知」される。そうなると、アイドルも人間なのでやはり人によって(良くも悪くも)若干対応が変わると言ったことが起きてしまう。すると、メンバーからの対応がよさそうなヲタに嫉妬する者が出てくる。その結果、ヲタとヲタの間で関係が少しギスギスすることもある。また、純粋にコミュ症にはこれはきつい。私みたいな内気で根暗な人間はやっていけない現場だなあと常々思う。

 

ライブではうちわは持たない

ご存じのとおり、ジャニヲタはコンサートに行くときに担当の名前や「バーンして♡」といったメッセージを書いたうちわを持参する。これはアイドルにアピールをしてファンサをもらうためのものである。しかし地下ヲタは、ライブにうちわを持っていく文化を持たない。それではどうやって推しアピールをするのか。ジャニーズと同じように、地下ドルにはたいていはそれぞれのメンバーカラーやイメージカラーが割り振られている。地下ヲタは自分の推しの色のペンライトを購入し、ライブではそれを振ることで自分の推しメンにアピールするのだ。ペンライトの文化においてもジャニヲタと地下ヲタの違いは大きい。ジャニヲタが持つペンライトは、コンサート会場で販売される、ツアーの公式グッズとしてのペンライトである。基本的には一人一本を片手にもち、もう片方の手でうちわを持つことが多い。地下ヲタは市販のペンライトを持つのだが、これは一人一本とは限らない。多い人になると各指と指の間に挟んで片手に4本ずつ、両手で合計8本持つという猛者もいる。目立つためには光の強さも重要らしく、少し光り方が暗くなったら電池を交換する。

 

ライブでヲタが振付を踊る

ジャニーズのコンサートでも特徴的な振り付けの曲などはファンがペンライトを持った手で踊ったりはする。しかし、地下ヲタはライブでは基本的に踊る。ライブのDVDを見せてもらうと、色とりどりのペンライトが上下左右に華麗に動いている。また地下ヲタに特有の掛け声や振付もあり、新規にはとてもついていけない。私も数回妹に同伴して地下ドルのライブに潜入したことがあるが、その時私は一言も発さず、ただただ妹に貸し出されたペンライトを上下に振る運動を繰り返していた。

 

~最後に、持論:ジャニヲタと地下ヲタの精神の違い~

ここまでジャニヲタと地下ヲタの相違点をつらつらと述べてきたが、最後に私の持論を述べておきたいと思う。

 

地下ヲタを身内に持つジャニヲタとして1年間生きてきた私が考えるのは、地下ヲタとジャニヲタでは自分とアイドルとの関係に求めるものが違うということである。これは完全な私の持論ですべてに当てはまるわけではないが、私はジャニヲタは偶像崇拝型のドルヲタだと思っている。ジャニヲタが愛するアイドルは基本的にテレビの向こうの人、まさに偶像である。さまざまなメディアで担当が活躍するのを見て、その一挙手一投足に嬉々として、毎日を過ごす。ジャニヲタにとってのアイドルは、その憧れ、尊敬、または恋心などあらゆる感情の対象である。同じ番組の録画や同じコンサートのDVDを何度も繰り返し見ては自担の素晴らしさを再確認する。そうして暮らすうちに、たまにコンサートに行く機会が訪れる。いつも画面の向こう側にいたアイドルが目の前にいる。幻かとも思っていたその人が自分の前で歌い踊り、笑っている。その感動は計り知れないものである。私は今年の春のWhiteのコンサートで初めてシゲちゃんを目にしたとき、「あ、この人、実在の人物なんだ」という感想を持った。

 

これに対して、地下ヲタは思い立ったら毎週でもアイドルが踊る姿を見て、さらには一対一で会話までできてしまう。こうなるとジャニーズと違って彼らは偶像ではなく、例えるならばクラス一の人気者のような存在であると思う。日常的に目にすることもできて、話すことも難なくできるが、やはり違う世界に生きる人、といったところだろうか。

 

妹が地下ドルの世界に行ってしまって、以前ほどジャニーズの話ができなくなったのが寂しい私は、たまに妹に「ジャニヲタに出戻っちゃいなよ~」とふざけて言ってみるのだが、「認知される楽しさを知ってしまった今は、遠くで眺めることしかできないジャニーズじゃ満足できない…」と言う。私は妹とは全く反対で、遠くからその姿を眺めてはその生き方に憧れて生きる糧にするヲタク生活を愛しているので、会いに行くことを楽しむ地下ヲタの妹とは別のスタイルのアイドルヲタになってしまったなあと思う。まあお互いに人生楽しんでいるのでこれで良しだね。


地下ヲタの妹の話はまだまだあるので、おいおいそれについての話もできたらなあと思う。